ハイアットはホテル業界でしばしば「小さすぎる大手」と評される——マリオットやヒルトンに比べてプロパティ数は劣るが、ラグジュアリーセグメントへの集中度では引けを取らない。今回の拡大発表はその選択を強化するものだ。
発表された拡大計画の骨子
ハイアットは2026〜2027年にかけて、パーク・ハイアット、アンダズ、トンプソンホテルズ、アリラを中心にラグジュアリー・ライフスタイル系ブランドの開業を加速する計画を発表した。主要な開業地として中東(サウジアラビアのネオム関連プロジェクト、ドバイ新施設)、東南アジア(バリ、バンコク)、欧州(イタリア、ポルトガル)が挙げられている。
注目されるのはアンダズ(Andaz)ブランドの拡大だ。アンダズはハイアットのライフスタイルラグジュアリーブランドで、コンテンポラリーデザインとローカルカルチャーの融合を特徴とする。価格帯はパーク・ハイアットより若干下のポジションで、30〜40代のアッパーミドル旅行者をターゲットとしている。
ラグジュアリーセグメントへの集中——なぜ今か
2022〜2024年の旅行回復期において、最も強い回復を見せたのはラグジュアリーセグメントだった。世界的なインフレ下でも、富裕層の旅行支出は維持または拡大し、「消費を減らしても旅行の質は落としたくない」という傾向が顕在化した。
ハイアットはこのトレンドを見越して、中価格帯(ハイアット・プレイス)より上位ブランドへのリソース配分を増やしている。総客室数ではマリオットの10分の1以下だが、ラグジュアリー系ブランドの比率はハイアットの方が高い——これは意識的な選択だ。
アライラ(Alila)ブランドの役割
ハイアットが2018年に買収したアライラは、アジア太平洋のラグジュアリーリゾートブランドとして確立されている。バリのアライラ・ヴィラス・ウルワツ、マンダパ(リッツカールトン・リザーブとの競合)などが評価の高い事例だ。
今回の拡大計画でアライラは中東市場への進出を本格化する。サウジアラビアとUAEで検討されている新プロパティは、ビジョン2030に伴う観光インフラ整備の波に乗るタイミングだ。中東ラグジュアリー旅行はすでにアマン、フォーシーズンズ、ロスウッドが競合しており、アライラが差別化できるかは現地コンテキストとの融合度にかかっている。
数字の文脈
ハイアットの2025年末時点の総プロパティ数は約1,300(客室数約31万室)。マリオットの約9,000プロパティ、ヒルトンの約7,400プロパティと比べると規模は小さい。しかし平均客室単価(ADR)ではハイアットはこれらの競合を上回る——規模よりも単価と体験に賭けるという戦略の数字的な結果だ。
今後の焦点は、ネオムのような大規模開発プロジェクトとの契約が実際に開業まで進むかどうかだ。中東の一部プロジェクトは計画と実現の間に大きなギャップがあることで知られており、ハイアットの中東強化がどの程度確実なものかは慎重に見る必要がある。
