音楽ストリーミングは長年、「CDより安くて何百万曲も聴ける」という約束で成長してきた。その約束が、静かに書き換えられている。
Appleは7月18日、Apple OneおよびApple Musicの料金を改定した。日本では個人プランが月1,180円、Apple Oneが1,350円にそれぞれ値上げとなる(Impress Watch報道)。フランスでも同様の値上げが01net.comおよびNumeramaによって確認されている。Appleが公式に示した理由は「ライセンスコストの上昇」(Music Business Worldwide、Variety)だ。
この「ライセンスコスト上昇」が意味するもの
この表現は、業界が長年抱えてきた構造問題を婉曲に言い表している。Universal、Sony、Warnerの大手3レーベルは定期的にストリーミングプラットフォームとの契約を再交渉し、加入者数が増えるほど要求も大きくなる。これまでApple MusicやSpotifyは、新規ユーザー獲得による規模拡大でコスト増を吸収してきた。
しかし先進国市場のストリーミング普及率はすでに飽和に近い。大きな成長が見込めない以上、ライセンスコストの上昇分は利用者へ転嫁される。今週の値上げはその転換点を示すものだ。
Appleのエコシステムという緩衝材
Appleはこの局面でSpotifyより有利な立場にある。Apple MusicはiCloud+、Apple TV+、Apple Arcadeなどを含むApple Oneバンドルの一部であり、すでにAppleのエコシステムに深く組み込まれたユーザーが他社サービスへ移行するコストは小さくない。
ただし、このアドバンテージには限界もある。YouTube MusicやAmazon Musicは、すでに契約中のサービスに含まれることが多い現実的な代替手段だ。Apple Musicの単独契約ユーザーとApple Oneユーザーでは解約リスクが大きく異なる。
今後の展開
日本・フランスでの値上げは、他市場への波及の先触れと見るのが自然だ。より重要な問いは、ストリーミングの価格を実質的に決めているのは誰か、ということだ。答えは、プラットフォームではなくレーベル側の交渉担当者たちである。そのサイクルはまだ回り続けている。
