BYDは手頃な電気自動車で名声を築いた。シーガル、ドルフィン、ハン——実用的で価格競争力があり、中国でほぼすべての競合より売れている。その評判はBYDの成長を支えてきたが、同時に一つの天井も作ってきた。プレミアム市場での消費者認識において、BYDは「手頃」でも「憧れ」ではなかった。

新型スーパーカーは、その天井への直接攻撃だ。

数字の意味

BYDが主張する0-100km/h加速タイムは、電動・ガソリン問わず量産車の最高峰クラスに位置する。参考までに:テスラ・モデルSプライドは2秒以内、クロアチアのリマック・ネヴェラは電動ハイパーカーの基準として1.97秒を記録している。BYDの発表はこのブラケットのトップを目指している。

自動車業界のカタログスペックは独立した計測による検証が必要だ——発表値と実際の計測値に差が出ることは珍しくない。生産モデルへのメディアアクセスが可能になれば、正確な数字が確認される。しかし発表が狙うパフォーマンスカテゴリーは明確だ。

なぜBYDはこれをやるのか

スーパーカー戦略は販売台数の最大化ではない。アット3やシーライオン7と比べれば、販売台数は圧倒的に少ない。投資回収はブランドエクイティで行われる。

ブランドが「世界最速の車を作れる」と証明したとき、その認知の光は全ラインナップに波及する。フェラーリはトラクターとテーマパークの乗り物を展開している。それが成立するのは、フェラーリにレース由来のブランド遺産があるからだ。

BYDの論理:リマックを超えるスーパーカーを作れるなら、プレミアムセダンやSUVにも改めて目を向けてほしい。

日本市場での意味

BYDは現在、シーライオン7で日本市場に本格参入しつつある。日本市場はトヨタ・ホンダ・日産への愛着が強く、外資EVには高いハードルがある。

スーパーカーの発表は、日本の消費者に対する認知工作でもある。「中国の格安EV」という先入観を更新し、「最高水準の技術を持つブランド」として再定義する試みだ。即効性はないが、ブランド認識の変化は時間をかけて積み重なる。BYDが仕掛けているのは長期戦だ。