ラグジュアリーブランド絡みの裁判の多くは偽造品問題だ。しかしこの事件は違う。香港のシャネル倉庫に関わる物流業者の従業員2名が、廃棄予定だった724点——バッグ601点、財布123点——を盗んだとして告発されている。裁判が明かすのは、窃盗そのものを超えた問題だ。

告発の内容

グー・ヤウルンとチョン・カーワイは、香港でシャネルの委託を受けた物流業者の元従業員で、マークが所有する物品を共謀して盗んだとして起訴されている。行為は2月1日と2日に発生し、倉庫内の防犯カメラに記録された。倉庫の副マネージャーが2名を呼び止めたことで事態が発覚したとされる。押収された724点は、廃棄される直前の品だったと検察は主張している。

香港では半年ごとに1万〜2万点が廃棄される

公判で明らかになった数字が注目を集めた。証言によれば、シャネルは香港だけで半年ごとに1万〜2万点の製品を廃棄しているという。この慣行は「廃棄処分」と呼ばれ、過剰在庫がブランドイメージを損なうグレーマーケットや二次流通に流れないよう保護することを目的としている。

論理は明快だ。アウトレットや無認定のリセラーを通じて割引価格で流れたシャネルのバッグは、売れ残りよりも遥かにブランド価値を損なう。廃棄は「価値管理」の手段であり、単純な廃棄物ではない、という立場だ。

この裁判が変えるもの

問題は、年間数万点が半年ごとにシュレッダーにかけられているという事実が、これまで表に出てこなかったことだ。シャネルだけではない。バーバリーは2018年に廃棄額が公開され批判を浴び、英国では2022年に廃棄禁止の法規制が導入された。

しかし香港には同等の法的規制はない。この裁判は、ラグジュアリーハウスが沈黙のうちに運営してきたシステムを白日のもとにさらした。「何点?」「何を?」「廃棄に代わる選択肢は?」——こうした問いが再び焦点になっている。

価格を支える「希少性の管理」というパラドックス

シャネルにとって戦略的に厄介なのは、この廃棄こそが価格を支えているという事実だ。クラシックフラップが1万ユーロ以上で売れるのは、それが本質的に希少だからではなく、シャネルが供給を厳密にコントロールしているからだ——余剰品を廃棄することも含めて。

このモデルは理論的には成立する。しかし一度明るみに出ると、維持が難しい。持続可能性、職人技、不変の価値を語りながら、毎学期数千点の使用可能な製品を廃棄しているというのは、説明するのが困難だ。この裁判でシャネルの戦略が翌日から変わることはないだろう。しかし、不透明なシステムには、その不透明さが続く間だけ有効期限があるという事実を改めて示している。