フォルクスワーゲンがラインナップを削減するという報道は、経営危機のシグナルとして読まれることが多い。実際、ドイツ本国での工場閉鎖懸念や雇用問題と結びついた文脈で語られてきた。しかし自動車デザインの歴史を振り返ると、もう一つの読み方が浮かび上がる:縮小こそが、VWブランドのデザイン的再生の始まりになりうる。

多すぎた時代の代償

2010年代のフォルクスワーゲングループの戦略は明確だった。あらゆるセグメントをカバーし、あらゆる顧客層を取り込む。その結果として生まれたのは、VW・アウディ・シュコダ・セアトが驚くほど似たプラットフォームとスタイルを共有するラインナップだった。

デザインの観点から見ると、これは宿命だ。同一のMQBプラットフォームを共有するゴルフ、ティグアン、トゥアレクは、異なるサイズと価格帯を持ちながらも、デザイン言語の差別化が難しい。「すべてに存在する」戦略は「どこにも際立たない」結果を生みやすい。

「削る」がデザインに与える自由

縮小の先に見えるのは、各モデルが独自の存在理由を持つラインナップだ。

ゴルフの位置づけを考えてほしい。何十年にもわたり、ゴルフはVWのデザイン哲学そのものだった:機能的で誠実で、時代に合わせて進化する。しかし2010年代に追加されたSUVと派生モデルの波の中で、ゴルフは単なるラインナップの一項目に過ぎなくなった。

モデル数が絞られると、残るモデルがより多くのブランド重力を持つ。デザインチームはリソースと注意を分散させずに済む。アップやゴルフやポロという明確なキャラクターを持つ車が、薄まることなくアイデンティティを主張できる。

日本市場から見たVW

日本でのVWはユニークな立ち位置にある。国産ブランドが圧倒的シェアを持つ中で、欧州プレミアムの代表格として長年支持されてきた。日本の消費者はゴルフに対して特別な親近感を持っており、「コンパクトで実用的だが品質への妥協がない」という価値観に共鳴する文化的土壌がある。

その意味では、VWのラインナップ絞り込みは日本市場では追い風になりうる。ゴルフとポロという明確な柱に集中することで、日本消費者が最も親しんできたモデルへの投資が深まる。

アウディとポルシェが示す「フォーカスの効果」

グループ内のアウディとポルシェは対照的な教訓を与える。

アウディは近年ラインナップの複雑化に悩んできた。A1からQ8 e-tronまで、モデルが増えるにつれてアウディのデザインボイスは分散した。一方のポルシェは911・カイエン・パナメーラという数少ないコアモデルに絞り込み、各モデルが長年にわたって深化してきた。

デザイン的な完成度はフォーカスの産物だ。911が50年以上を経ても世界中で興奮を呼ぶのは、ポルシェがそのモデルに何十年もの注意を集中させてきたからだ。VWが向かうべき方向は、この「深化の哲学」だ。

縮小が問いかけること

ラインナップ削減はコスト削減の手段として始まるかもしれない。しかしその先には、「VWとは何か」というブランドの核心的な問いが待っている。

すべてのセグメントに存在するブランドではなく、特定のデザイン哲学を深く体現するブランドへ。この転換に成功したとき、VWは量産ブランドとしての親しみやすさとデザインの鮮明さを両立させる、数少ない自動車ブランドになれる可能性がある。

そのための条件は一つ:削るモデルを間違えないことだ。